
「自転車を追い越すときは30km/h以下にすれば問題ない」——そう思っているドライバーは要注意だ。そのルール理解、正確ではない。
警察庁が2026年3月に公表した資料をもとに、「1m」「20〜30km/h」という数字の正しい意味と、よくある誤解を徹底的に整理する。
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まず結論:判断基準は「速度」ではなく「安全性」
最初にはっきり言う。自動車が自転車の右側を通過・追い越す際のルールは、「特定の速度を守れば追い越してよい」というものではない。あくまで判断の基準は「その状況で安全に通過できるかどうか」の一点だ。
「30km/hに落としたから大丈夫」「速度を落としたんだから追い越してOK」——この考え方は法律が求めているものとズレている。

法律上の根拠:道路交通法18条3項
道路交通法18条3項では、自動車等が自転車等の右側を通過する場合、両者の間に「十分な間隔」がないときは「間隔に応じた安全な速度」で進行しなければならないと定められている。
一点だけ補足しておく。この規定は厳密には「右側を通過する場合(追い越す場合を除く)」が対象だ。追い越しには道交法28条なども別途適用される。ただし、追い越し時も右側を通過する行為を伴うため、18条3項の精神は追い越しの場面でも当然考慮されるというのが実務上の解釈だ。
「1m」と「20〜30km/h」の正しい意味
警察庁の資料には以下の目安が示されている。
- 自転車との間隔はできる限り空ける。少なくとも1メートル程度が安全
- 1メートル程度の間隔が確保できない場合は、時速20〜30キロメートル程度で運転する
そして資料には明確にこう書かれている。「上記はあくまで目安」。「十分な間隔」や「間隔に応じた安全な速度」は、具体的な走行状況・道路状況・交通状況等により異なるとされている。
| 項目 | 正しい理解 | よくある誤解 |
|---|---|---|
| 間隔「1m」 | 安全の目安。絶対的な法的基準ではない | 「1m空ければ必ずOK」 |
| 「20〜30km/h」 | 1m確保できない場合の参考値(あくまで目安) | 「この速度なら追い越してよい」 |
| 判断基準 | 速度ではなく「安全性」の総合判断 | 「速度を落とせば必ずOK」 |
「30km/hならOK」「速度を落とせば必ずOK」は完全な誤解
改めてはっきり言う。「30km/hに落とせば追い越してよい」というルールは存在しない。20〜30km/hは1m確保できない場合の参考値にすぎず、この速度を守れば追い越しが許可されるというものではない。
同様に「速度を落とせば必ず追い越してよい」も誤りだ。安全判断は速度だけで決まらない。自転車のふらつき・急な方向転換・路面状況・対向車の有無など、さまざまな要素を総合的に判断して「安全に通過できる」と確信できる場合のみ、追い越しが許容される。
「1m確保できない場合」いったい何が正解?
おそらく多くのドライバーが知りたいのはここだ。「狭い道で1m取れない」「黄色線があってはみ出せない」——そういう場面では実際どうすればいいのか?
警察庁の資料はこう示している。「1m程度の間隔を確保できない場合には、時速20〜30km程度で運転しましょう」。つまり、1mが確保できない状況でも、速度を落とすことで通過すること自体は否定されていない。
ただし、ここで絶対に誤解してはいけない点がある。
- 20〜30km/hはあくまで目安であり、「この速度なら必ず追い越してよい」という保証ではない
- 自転車のふらつきや路面状況によっては、20km/hでも危険な場合がある
- 「速度を落としたが、それでも安全とは言えない」と判断したなら、追い越さないのが正解
黄色線(センターライン)がある場合はさらに注意が必要だ。黄色線ではセンターラインへのはみ出しが禁止されているため、はみ出さずに安全な間隔が確保できないなら、追い越し自体を行わないのが原則となる。速度を落としても、物理的に間隔が取れない状況での追い越しはリスクが高い。
まとめるとこうなる。
| 状況 | 正しい対応 |
|---|---|
| 1mは取れないが、20〜30km/hに落とせば安全に通過できる | 速度を落として通過してよい |
| 速度を落としても、ふらつき等で危険だと感じる | 後方で待機。追い越さないのが正解 |
| 黄色線ではみ出せず、かつ間隔が確保できない | 追い越し不可。後方で待機 |
「20〜30km/hに落とせば追い越してよい」ではなく、「20〜30km/hに落としても安全かどうかを判断した上で通過する」——この順番が重要だ。速度はあくまで判断材料のひとつにすぎない。
実際に起きている現実 ドラレコ動画が示す「渋滞問題」
新ルールの施行後、こんな動画がX上に投稿されて話題になっている。
やっぱりこうなってしまうのよ。
— 諸岡武士🧢(ごっち) (@TMORO52773900) April 3, 2026
信号2箇所はさんで約2分間程この状態でした。
トラックも車も困るんだけど、自転車の方も気を遣って左に寄りすぎ。道の悪いレーンを走ったり歩道を走ったりで余計に危なかしく感じました。
これが本当に交通安全につながるのか疑問です。#自転車追い抜きルール pic.twitter.com/tPQcWTJh0g
動画では、自転車1台の後ろにトラックや乗用車が連なり、信号2箇所をはさんで約2分間その状態が続いている。投稿者は「自転車の方も気を遣って左に寄りすぎ、道の悪いレーンを走ったり歩道を走ったりで余計に危なかしい」とも指摘しており、ルールを守ろうとする結果として新たな危険が生まれている側面も見えてくる。
これはルールの問題というより道路インフラの問題でもある。自転車が安全に走れる十分な幅の車線がなければ、どれだけルールを整備しても現場では矛盾が生じる。後方のドライバーとしてできることは、焦らず待つこと、そして無理な追い越しで事故を起こさないことだ。
「この場面どうする?」ケース別の正しい判断
ケース①:白破線のある片側1車線道路
対向車がいない状況で、1m以上の間隔を確保しながら追い越せるなら、安全を確認した上で追い越し可能だ。ただし間隔が確保できない場合は速度を落として通過するか、安全が確保できないと判断したら追い越さずに後方で待機するのが正解。
ケース②:黄色実線(センターライン)のある道路
黄色の実線はセンターラインへのはみ出し禁止を意味する(道交法17条5項)。はみ出さずに安全な間隔が確保できない場合は、追い越しを行わないのが原則だ。「速度を落としたから抜けるだろう」という判断で無理に追い越すのは、違反になるリスクがある。
ケース③:自転車がふらついている・子どもが乗っている
自転車の動きが不安定な場合や、子どもや高齢者が乗っている場合は、急な方向転換が起きる可能性が格段に高い。目安の間隔と速度以上に余裕を持った対応が必要で、少しでも不安があれば後方で待機するのが安全だ。
ケース④:交差点付近・坂の頂上など追い越し禁止場所
道交法30条で定める追い越し禁止場所では、自転車であっても追い越しは禁止される。標識・標示を必ず確認しよう。
まとめると「間隔・速度・待機」の3択で考える
| 状況 | 正しい判断 |
|---|---|
| 十分な間隔が確保できる | 安全確認の上で通過OK |
| 十分な間隔が確保できない | 速度を落として通過(それでも危険なら待機) |
| 間隔も速度対応も無理 | 後方で待機。無理に抜かないのが正解 |
自転車との事故は重大な結果を招く。「たぶん大丈夫」という感覚の追い越しが一番危険だ。「確実に安全」と判断できる状況でのみ追い越すというシンプルな原則を徹底してほしい。
まとめ
この記事のまとめ
- 「1m」「20〜30km/h」は警察庁が示した目安であり、絶対的な法的基準ではない
- 「30km/hに落とせばOK」「速度を落とせば必ず追い越してよい」は誤り。判断基準はあくまで「安全性」
- 黄色線のある道路ではみ出しができない場合、安全な間隔が確保できなければ追い越しは行わないのが原則
- 迷ったら後方で待機。「確実に安全」と判断できる状況でのみ追い越すのが正解
参考資料
- 警察庁「自転車の交通ルール等に関する資料(2026年3月)」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/202603.pdf - 道路交通法 第17条・第18条・第28条・第30条
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